The other side of urban city life

The other side of urban city life

あなたが息をする街の横顔。
「The other side of urban city life」
2013/11/20 out

(収録曲)
1.Lily 2.ソウルボトム 3.Stand by me 4.Everyday (Instrumental)
5.Feel again 6.Imagination (Instrumental) 7.Free me
8.Here & there (Instrumental) 9.Sweet relax 10.Lily (acoustic version)

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[The other side of urban city life]

誰でも日常生活の中で心に感じること一つ一つが、その人の音楽となり、歌になると思います。時には流され、時には踏みとどまり、日々、人や自分の感情の流れを見つめていると、物事の持つ意味や理由、沢山の言葉よりも大切なことがそこに隠れているような、そんな気がします。

言葉であらわせない気持ちを胸に、透きとおった目で世界を見たい。
自由に音をつむぐことは、その旅を続けるための片道切符なのかも知れません。その旅の途中であなたに出会えたことを感謝します。

HAPPY SAD (草野洋秋)

[ライナーノーツ] 文:Jeffrey yamada

無邪気な子供、理性ある大人、慈しむ親。人間の心には3人の自分(自我状態)が在るという。これらが状況によって人のふるまいとして現れ、互いに交流することで人間の関係性が生まれる
(引用:”Transactional Analysis” 1957, Eric Berne)。

都市をその集合体としてとらえた時、何が見えてくるのだろうか。HAPPY SAD の作品に耳を傾けると、そんな問いかけが心に浮かんでくる。シンガーソングライター/サウンドクリエイター、HAPPY SAD の作品に初めて接した時の鮮やかな印象は今も色あせない。2008 年のアルバム「Feel Like Happy Sad」は、誰もが日常にふと感じる光や影、喜びや悲しみを、際立つメロディと、綿密なアレンジで追体験させてくれる短編小説集のようだった。それから経過した5年間の活動を通じて、彼が手にしたもの、それはフォーマットにとらわれない、さらに自由なフィールドだった。

2013 年、MTV/Lenovo 主催クリエイターコンテストの国内DJ 部門で優勝したという事実はその裏付けのひとつ。音楽は心象風景、というスタンスは彼の創作活動に大きな意味をもっている。ここに届けられたアルバム「The Other Side of Urban CityLife」はそんな HAPPY SAD の生活者としての日常の視点が散文的にポートレートされている。

愛する人と過ごした時間を、意味あるものとしてもう一度受け止めようきわめつけにヘブンリーな旋律でこうメッセージする「Lily」 が本作のオープニングと、(装いを変えて)エンディングを飾る。リグレットな感情すらも、刹那な美しさをもって希望へとつなげる、まさにHAPPY SAD サウンドの象徴的なナンバーといえる。初期のPrefab Sprout を彷彿とさせるプロダクションは、80 ~ 90 年代渋谷系リスナー世代にとっても余りに心地良い。アルバムリリースに先駆けてシングルカットされた「Soul Bottom」は60s ブリットロックのテイストで主人公の閉塞感を描きながら、アーシーなベースライン、ソウルフルなホーンセクションがストーリーのブレークスルーを予感させる。The Last Shadows Puppets、古くには The Dukes of Stratosphear らが手を染めた領域だ。

そして本アルバムの中核をなす「Stand by Me」が続く。ヘヴィなドラムロールから導かれる、重厚でシネマチックな展開に心を奪われるリスナーも少なくないはず。かくいう自分もその一人で、この世界観からも先述のアルバム「Feel Like Happy Sad」に収録の「種蒔く人/ The Seeker」の続編とも位置づけられそう。二項対立の認識を否定するかの主題は軽いものではないが、ギターバンジョーの乾いたサウンドが客観性を手がかりとして残してくれる。

さらには”Yesterday, where didyou sleep … ” とレッドベリー~カート・コバーンの唄った伝承民謡にインスパイアされた一節は、Beck やTravis の文脈を経たHAPPY SAD からのアメリカーナへの回答なのかもしれない。
すでに受賞等を通じて高い評価を受けているインストゥルメンタ「Everyday」。ひとつひとつのサウンドやメロディの断片は、そこに在る理由を控えめに主張しているかのようで、そのエッジの効いた音像は聞き手の想像力を刺激する。
さらに、ラーガでペイズリーな雰囲気をもつ「Feel Again」、アジア人としてのアイデンティティを模索しているかのようにドラマチックな「Imagination」へ。グルーヴィな光景を甘く切なく浮かび上がらせる「Free Me」 は、ポップス職人としての見事なお手並み。フリーソウルな AOR ナンバー「Here & There」は本アルバムのタイトルにもあるUrbanCity Life のサウンドイメージであるかのようなスリリングさに満ちている。
マニアックなリスナーをニヤリとさせるのが「Sweet Relax」。アンディ・パートリッジを連想させるサウンドコラージュ的なこの曲では、本人いわく、「オールド・スクール的な」アプローチを楽しみながら様々に試してみた、と。それは巧みな設(しつら)えの空中庭園のようだ。

そしてエンディングの「Lily」のアコースティック・バージョンが、このきわめて個性的な作品集をオーガニックなテイストでクローズしてくれる。サウンドメイキングの確信犯 HAPPY SAD には、いつもしてやられる。しかし、ストーリーテラー(語り部)として、都市に暮らす人々へ投げかけるまなざしは常に優しい。ジャンルや時代をこえたミュージシャン、アーティストからの影響、リスペクトを謙虚に公言しつつも、フォーマットにとらわれない求道者としての姿にはシンパシーを感じずにはいられない。

なぜなら、彼はどんな去り際にも「希望」を残していく事を忘れないからだ。HAPPY SAD が描き出す追憶の情景は、違った明日を予感させてくれる。

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Jeffrey Yamada プロフィール

音楽評論家。
ルーツミュージックからR&B、ポップス、パンクまで「社会の必然(と偶然)」から生まれた音楽とその背景についての探求をテーマとして活動を続ける。過去の出稿は「アコースティックギターミュージック名盤350」(音楽出版社)、「モンドミュージック」(アスペクト)、「アートオブフォーキーズ」(音楽之友)、「Martin D-28 という伝説」(えい出版)など。

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