The sower

Album「The sower」 2022/3/8 out

(収録曲)
1.Get high together now 2.Sometimes I feel wonder 3.Everything is cost to pay 4.Lovers rock 5.向日葵 6.Lily 7.All or nothing 8.Let’s get together 9.Soul bottom 10.花の冠 (Spotify, iTunes, amazom mp3各種配信サイトにてリリース)
Hiroaki kusano : Songwriting,lyric,arrange,mix,vocal,chorus,guitar,bass,keyboard,programming
Shinta miyazaki : bass(on track1,7,8,9) Stubbie studio : Mastering


[ライナーノーツ]文:Jeffrey yamada

「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」

アラン・カーティス・ケイ / Alan Curtis Kay (計算機科学者、教育者、ジャズ演奏家)       
(1971年、パロアルト研究所の研究内容の将来予測を再三に渡って求めるゼロックス本社に対する回答対象)

 溜飲を下げる。「喪失-悲しむということ」 (小此木啓吾・1979 / 中公新書) をもういっぺん読む。アイデンティティ(identity)とは何か、それを、「対象喪失」という繊細な解釈を通して確認できる。見えてくるものは思考と感情、そこから包括的な定義が示されている。「The Sower / 種蒔く人」(2022) Happy Sad は、再び原点回帰し、伝統とのコラボレーションを通して静かにたたずんでいる。  

「Get High Together Now」はピュアでソウルフルだ。「Sometimes I Feel Wonder」はダークネス。先達の伝統は「Everything Is Cost To Pay」、基準だ。ビロードの輝きを放つ「Lovers Rock」。そして「向日葵」には、水位線を持つ「孤高」の時を感じる。「Lily」は蜃気楼~痛々しいメランコリー。「All Or Nothing」は自己認識か。「Let’s Get Together」は和音。関わり方は「Soul Bottom」。表現空間を構築する「花の冠」は、豊かな残響を残す。

感じる心 : それは偉大なる先達の伝統を継承するだけではなく、自らの記憶の断片たちを紡き出す。それは、衒い(てらい)-「自分の才能や知識を見せびらかすこと」- とは全く違う。愛情に飢え、道に迷いやすいカウボーイズ・ラメントの免罪符として、独自性を手の中に握りしめ、カオスを越えて、Happy Sadは進んでいる。 Spirits / スピリッツ。                    

山田 裕康 / Jeffrey Yamada 

音楽評論家 ルーツミュージックからR&B、ポップス、パンクまで「社会の必然(と偶然)」から生まれた音楽とその背景についての探求をテーマとして活動を続ける。過去の出稿は「アコースティックギターミュージック名盤350」(音楽出版社)、「アート・オブ・フォーキーズ」(音楽之友)、「アコースティック・ギター・ディスクガイド」(シンコー・ミュージック) など。

文:Hiroaki Kusano (草野洋秋)


ライブで演奏する頻度の高い曲達を、今の自分の感覚で作り直し一枚のアルバムにしようという気持ちが数年前からあり、今回やってみました。バンド形態やソロでライブ演奏する時に、演奏する曲の録音物が古くなっていた事に気づいて、新しく録り直しておこうというのが理由です。
世の中も自粛期間なのでライブは一旦停止して、そのエネルギーは録音に使ったり、あるいは新しい機材・楽器を導入してみたり、いつもと違う曲や音の作り方をしてみたり、アウトボード機材をレンタルして色々試してみる事にしました。自分の音楽にも普段の制作仕事にも生かせる事が何かあるだろうと。

自宅で植物を育てているのですが、植物は季節が移り替わり花が枯れても、また次の年になると栄養を蓄え、陽射しの方向に手を伸ばし、やがては豊かな花を咲かせます。
種を蒔いて植物が育つまで、土や水の栄養を受け取ることができるか、太陽の陽射しを葉で摂取できるかどうか、季節の寒暖に体調を合わせられるのか、花にとっては色んな難局を迎えている事でしょう。ただ、そういった花の気持ちを想像する事も、もし種が蒔かれていなければ考察する事もないはずです。

種を育てて花を咲かせる、というのは比喩表現でもあります。
それは人と人が長い時間をかけて築く良い関係を表す行為かも知れないし、何かの目標に向かって時間をかけて進んでいく事かも知れません。何より種を蒔く事はまだ姿の見えていない花を慈しむ行為でもあります。
どんな花が生まれてくるかわからないけれども、その面白さを期待と共に楽しもうとしている状態ですね。その様な気持ちをアルバムタイトルとして今回付けてあります。