The other side of urban city life
リリース記念対談
HAPPYSAD ×JEFFREY YAMADA
第九回「気持ちよく感じる心」
山田:前も話してたけど。音楽って本当に楽器弾かなきゃいけないのかな?と思うよね。曲を聴いて「ああ、いいなあ」と思うということでも 十分かなと感じる。
草野:今僕らが「音楽」と言っているものって、「気持ちよく感じる心」のことですよね。
山田:そうそう。楽器を弾くのはプロセスなんだと思う。 過程に過ぎないのかなと。
草野:最終的には人間としての完成を目指しているような、そこに進んでいこうとしている気がしますよね。だから、曲をつくることもプロセスなのかも知れませんよね。
山田:うん。楽器とか文学とか抜きでも、 そこに進んでいく人もいるんだろうね。
草野:何かにこだわるがあまりに閉鎖的になっていく人も いるんだけど、僕らは実際に人と会ってそういう話しても 閉鎖的にならないですよね。
山田:だからいい歳してやってられる、っていうのは あるかもね(笑)
草野:(笑) 以前、会社を引退された年配の方々のライブイベントへ山田さんに連れて行っていただきました。演奏者の人達は名だたる企業の偉い方々だったのですが、高校生の時から組んでいるバンドをああして定年後もみんなでやっている姿はなんか良かったですね。
山田:あの人達は50年とかやってるからね!彼等がコピーしている大元のバンドはとっくに解散して、この世にいないのに。それよりも長くやってる感じ(笑)
草野:喜びのかたまりのような姿だったので、 いいなあ、と素朴に感じました。知名度とか、上手い下手とかで音楽をあんまり聴きたくないとあの姿を見ていたら思いましたね。
山田:僕はとてもあの人達をリスペクトしてるからいいのだけど、「また来ないのか?何人くらい呼べそう?」とか電話が来る(笑)
草野:そこは案外しっかりしているんですね(笑)
山田:あの人達は、人が一人来ようが来まいが別にいいわけだよ。でも、誰が何人ライブに呼んでくるって大事。 憎めないところだよね(笑)
草野:(笑)
山田:話はかわるけど、 うちの近所に「なんとかパン工房」みたいのが出来てさあ。貼り紙に何月何日オープンとか書いてあるの。で、その日にそこへ行ってみると朝の四時から人が集まってるわけ。オープニングだからって言って、そこで待ってるんだよね。
草野:へええ。
山田:パンが好きな方々というのは「パン通」ですね。パン通な方々というのは、それを求めるのであれば、何処でも行ちゃうみたいな感じ。 その人達が何を買うかっていうと、やっぱり食パンみたい。 味といい、たたずまいといい、全てがそこに凝縮されているんだろうね。
草野:「美味しんぼ」の海原雄山じゃないんですから(笑)
「シンプルなものの中にこそ、美味さが凝縮されているのだ!」みたいな。バンドでも同じですもんね。小手先の技術がいっぱいあるよりも、単純に8ビートがしっかり安定している人のほうが大体演奏うまいですよね。
山田:だからビートルズのリンゴ・スターは永遠だっていうさ(笑)
草野:そういうものがパンの世界にもあると。
山田:魚釣りに例えるんだけど。今度はタイを釣る、ヒラメを釣るぞ、って言ってるんだけど、最後は結局フナに戻るというかさ(笑)
草野:ははは(笑)
山田:「お前スタイルがどうとか、この前言ってたことと違うだろ!」とか、思っちゃうんだけど。その根底にあるものを理解するかどうか分かれ目だと。だから釣りやったほうがいいよ(笑)
草野:実は僕、今すごく釣りがやりたくて(笑)音楽以外のものから栄養をいっぱいとりたいんですよ。釣り行きましょう。 飯田橋の先あたりに中央線から見える釣堀ありますもんね。 あそこ行きましょう。
山田:あそこは石野卓球が行ってたね(笑)
釣りって音楽に似てるとこある気がするよね。自分は今こういうスタイルっていうのが。あと、奥田民生なんかも釣り好きだよね。
草野:ぼおっとしながらやりたいですね。そういえば、この前の奥田民生さんのライブよかったですねえ。ギター一本であんなにも。
山田:すごかったねー。 あんなに素晴らしいとは思わなかった!あのイベント(World happiness 2013)における彼の位置づけってさ、 理屈ぽいかも知れないけど、日本の社会の縮図だと思うんだよ。
草野:またすごい大きな話になってますが。。
山田:というのは、自分もそうなんだけど、40代半ばから後半のあの世代というのはさ、次の世代と、その上の世代のちょうど間に入るわけよ。
草野:つなぎ目なんですね。
山田:そう!見事に彼はそれを演じていて。ライブのMCで「最近、手の甲がかゆくて。何でなのかわからないんだけど・・・」とか言ってたじゃない。「ちょっと後で先輩方にきいてきまーす」とか言って(笑)
草野:(笑)
山田:あれ見た先輩は、かわいい後輩だと思うんじゃないかなあ。奥田民生の持つ上の世代へのリスペクトだと思うのよ。
草野:しかも、民生さんのああいう姿って、上の世代の人達に媚びてるわけじゃないんですよね。そこがいいですよね。
山田:媚びたらダメだよ。そうしたらあんな風にはならない。仕事でもそうだけどさ、「オヤジごろし」ってあるじゃない?彼はオヤジごろしだと思うよね。上の世代から見たらかわいいと感じると思う。でも、オヤジだけをころしても仕方ないわけで、やっぱり次の世代に対してきっちりと方向性を見せることも彼はやっているわけじゃない。いいよね。
草野:ええ。
山田:自分が音楽を聴いていて気持ちいい所って、やっぱりそういうとこじゃん。きっちりと前のバトンを受け取って、次に渡す っていうのをやっているのが僕はすごく好きなわけ。その人が自覚的か無自覚かどうかは別として。
草野:つまり、先人へのリスペクトとともに。
山田:先人に対するリスペクトがありながらも、媚び過ぎずに、 下の世代からも求められるような感じ。
草野:今現在のものに対しても過去のものと同様にリスペクトがあるということですね。自分達もそうあっていきたいと思いますね。
-(完)-
読んで下さってありがとうございました。
また対談がある日まで、ごきげんよう。