The other side of urban city life
リリース記念対談
HAPPYSAD ×JEFFREY YAMADA
第二回「ヘブンリーな感じ」
< アルバム「The other side of urban city life」全曲試聴 >
山田:アルバムについての話ですね。まず一曲目は・・・。
草野:「Lily」ですね。
山田:曲を聴きながらいこう。(iPodのスイッチを入れる)
この曲はシングルだったよね。
草野:そうですね、去年シングルで再録音しました。
オリジナルは四年くらい前に作ったのでした。
山田:そうか。随分テンポも違ってたもんね。
イメージしてるものとかあったんですか?
草野:歌詞の内容どおり、夕焼けと浜辺ですかね。
山田:イメージが合うような、そうでないような。浜辺って言われてもなあ(笑)
草野:お姉ちゃんがこう浜辺を歩いてゆく感じですね。
「イパネマの娘」(ブラジルで生まれたボサノヴァの古典的作品の一つ。
浜辺を歩くチャーミングな女性にみとれる様子が歌詞に出てくる)の
夕方版みたいな感じですね。
山田:ああ、確かにそう言われてみれば、ボサノヴァじゃないけれど、
リズムがそういうニュアンスあるよね。
リゾート感とかもあるね。
草野:HAPPYSADにリゾート感ありますかねえ?(笑)
山田:いやいやいや、それはわからないよ。
あとは、やっぱりアコースティックギターのカッティングでしょう!
草野:エレキギターでやらないっていうところが。
山田:あとはサビのところでチャララランてやるところだね。
草野:ああー、シャララランと(笑)
ウインドチャイムが入ってますね。
山田:サビでウインドチャイムが入るっていうのは、今の時代に
よくあるような。
草野:ああ、昨今のR&Bとかでありそうですね。
生楽器を使わないで打ち込みだけだったら、R&Bみたいになるタイプの
曲ではありますよね。
山田:このギターはいつもの、あのギターを使ってるの?
草野:そうですね、毎度使っているマーティンのアコースティックギターですね。なんか、ほかのギターよりしっかりと音が出るんですよね、あのアコギ。
山田:あとそうだ。(iPodを聴きながら)貝殻をどうのこうの、という歌詞があるから、やっぱり海だね。HAPPYSADは海っていうイメージは全然ないからさ(笑)
草野:(笑)
山田:やっぱり森とか山とかさ(笑)
草野:そんなことないですよ。あとは夕暮れ、黄昏、多摩川とか。
まあ、この曲は多摩川のイメージはないですけど。
山田:まあでも、やっぱりあれですね。「Lily」はサビのヘブンリーな感じが・・・
草野:なんなんすか、そのヘブンリーって(笑)
山田:トミー・フェブラリー・ヘブンリー、みたいな(笑)
僕が流行らせようとしている言葉なんだけど、ヘブンリー。
草野:(笑)
山田:解説文にも書いてるけど、ヘブンリー(笑)
「これいいじゃない、ヘブンリー!」みたいに使う(笑)
草野:それ、あんまり通じないと思いますよ(笑)
山田:通じないかなあ?(笑)
草野:トミー・フェブラリー・ヘブンリー・・・・・、ではないですね。
リリーはリリーです。
山田:ちょっと現実離れしているような、天から舞い降りたような。
そういうイメージでヘブンリーというさ。
草野:ありがとうございます(笑)
山田:それで次の曲はボトムに行ってしまうわけですね。
草野:そうです、「ソウルボトム」に。急にロックな曲に行くわけです。
5年以上前の曲で、もうずっとライブでやってきた曲ですね。
今回、シングル版からミックスを変えたので聴きやすくなっていると思います。
山田:これ、宮崎くんのベースいいよね。
草野:みやっさんのベースいいですね。
全部生バンドで録音したら、さらにいいかもですね。
山田:気持ちいいんじゃない?ラッパもステージに入れたりしたらさあ。
草野:生音は是非ライブで堪能してください!という。
山田:これは下敷きにしたバンドとかサウンドとかあるんでしょう?
草野:この曲をつくったのはかなり前ですからね。
今は何かをイメージしてやってないですが、作った当初は、
スモール・フェイシズとか、ポール・ウェラーのソロとかの影響ですかね。
山田:確かにね。
草野:あとはスライ&ザ・ファミリーストーンですかね。サビの感じだったり、
アレンジの雰囲気とか。
山田:なるほどなるほど。
草野:ストレートなロックで僕等はやってますが、ファンキーなミュージシャンが
演奏すると、とてもねちっこくなるタイプの曲だと思います。
山田:サビに入るところいいよね。ラップが「パッ、パッ、パッ」って。
お約束をきっちり守っていただいて。期待を裏切らない。
草野:この曲を作っていた五年以上前って、自分の好きなミュージシャンみたいなことをやりたいという気持ちの強かった時期だったので。
山田:そうか。この曲って録り直したんだよね。
草野:「Lily」と「ソウルボトム」は随分前の曲なので、録り直してますね。
古いバージョンはもう何年も前の録音ですね。
山田:録り直して、ギターの音いいよね。「ガッガッ」ていう。
草野:ガリガリとギターのカッティング音を気持ちよく前に出していますね。
山田:で、三曲目が幻の「Stand by me」ですね(笑)
草野:アルバムの曲順の表記になぜか記載がない「Stand by me」ですね。
山田:(笑)
草野:この曲はサビのコーラス部分(英語で歌っている部分)が、僕が19歳くらいの時に作ったメロディで、
他の部分を今の自分がつくったメロディなんですね。
山田:へえー。
草野:もともと昔つくっていた時は、サビ以外は別のメロディとコード進行があったのですが、どうもずっとしっくりこなくて、捨ててしまったという経緯がありまして。久しぶりにこの曲のサビ部分を弾いていたら、
上手く自然につながっていったという。
十代の時の自分と、今の自分とのコラボという曲ですね。
山田:これってもちろん曲もいいんだけど、アレンジがすごいじゃん。
面白いじゃん。シネマチックな感じが。
草野:この「Stand by me」だけ、
アルバム裏の解説文で山田さんがかなりの行数を割いているという。
そのあとの曲、一行二行くらいで解説を済ませている曲もあるのに・・・・。
山田:そうなんですよ(笑)
草野;壮大な感じになっちゃいましたけど。
山田:この曲、ギターバンジョーを弾いているけど、色んなミュージシャンの影響なのかという話があるけど。
草野:解説文ではベックとか入ってますが。
これは単にバンジョーを使ってるから言っているんじゃないかっていう(笑)
山田:いやーでもさ、このライナー書いている人がしつこく言ってますけれども、やっぱり、トラヴィス、ベック、あとエリオット・スミスの影響とかあるのでは。
草野:トラヴィスはストレートに好きだったバンドだったし、エリオット・スミスも好きだしというのはありましたけど。あの湿った感じというか。
山田:湿ったウェットな感じに、あのバンジョーの乾いた感じが入るのがなんとも不思議な感じですねえ。
草野:このバンジョーは山田さんが出ていた横浜バンジョー祭りとか、山田さん周辺のルーツミュージックをされている方々からの影響が強くて、サウンドを聴いていてどうしても使いたくなってしまいました。バンジョーは弾けないので、ギターとチューニングが同じギターバンジョーを今回勢いで弾きました。
山田:いいじゃないですか。丸いの。これからはイケてる人は皆、丸い楽器ですよ。
草野:それは一体、何十年代の話なんでしょうか(笑)
この前、山田さんにルーツミュージックを演奏する方々の集いに連れて行っていただいたのですが、面白かったですね。バンジョーはもともとどこの楽器だ?っていう話もありましたが。
山田:バンジョーはアフリカの楽器ですね。
草野:もともとはアフリカから奴隷としてアメリカに連れて行かれた黒人達が持っていった楽器だという話でしたね。僕なんかからするとアメリカの伝統的な楽器というイメージが強いんですが。
山田:そうそう。You tubeなんか見ていると、アメリカのバンジョー・ミュージシャンがアフリカにわたって、むこうの部族のところに行くと「これ、バンジョーなんじゃないの!」っていうシーンが出てきたり。
草野:バンジョーの原型みたいなものがあるんですね?
山田:そういうドキュメンタリーがあるよ。「これ同じじゃないか!」っていう。
草野:バンジョーというと白人のイメージが強いんですが、それは随分後の話なんですね。
山田:そう、あとあと。黒人でもバンジョーを弾く人は一杯いるし、もともとはミンストレルというか、ボードヴィル、コメディアンみたいな人が弾いたというか。園芸というかね。白人がカントリーで弾くというのは全然あと。
草野:へえー。
山田:しかし、こういう色んな楽器を取り込んで曲をつくっていく、というのは良いよねえ。機材でバンジョーの音色を出せるものってあると思うんだけど、これはあえて自分でバンジョーを弾くことにこだわったわけですか?
草野:機材に入っている生楽器の音色を使って、ギターやバンジョーのパートを作ろうとするとやっぱり「打ち込み」っていう感じになっちゃいますからね。それが効果的であれば、面白い場合もあるんでしょうけど。
山田:なるほど。
草野:生楽器はなるべく生で録りたいというのはありますね。
曲自体も、最初につくった時に思い描いていた空間的・シネマチックな感じで作れたかなと思っています。
山田:そうだよ。HAPPYSADってさ、ソウルだったりリズム&ブルースだったり、ポップスだ、AORだのっていう影響はあると思うんだけど、やっぱりサントラとかさ。
草野:はい?
山田:サントラの「映像が浮かぶ感じ」ってあるじゃない?
草野:確かに、曲を耳にして絵が思い浮かぶって大事ですよね。
山田:そうそう。非常にそう思う。
草野:単館系の映画をつくられている方は是非、この「Stand by me」をテーマ曲に使っていただいて・・・。