sometimes I feel wonder

Sometimes I feel wonder / Loop life

自分の手で触れ、自分の目で見る。
両A面シングル「Sometimes I feel wonder / Loop life」 2014/8/23 out

(収録曲)
1.Sometimes I feel wonder
2.Loop life
Lyric / 歌詞

[ライナーノーツ] 文:Jeffrey yamada

異才の人、谷川俊太郎の作品群が世代をこえて生々しい手触りで日本人の心に在り続ける理由はいくらもある。オルタナティブな創作活動の姿勢に目をやれば、「ひとくい土人のサムサム」や「誰も知らない」等の作品に顕著なアナーキズムを引き合いに出す筋も多い。

社会秩序や常識というプロトコルが解放された時にようやく感じることのできる、慈しみの心。不自由であるからこそ自由がわかる、死んでいるからこそ生きる意味がわかる。誰にも容易に想像つく理屈とはいえ、そこに it’s too late な諦念感は微塵もないところが凄みなのではないだろうか。

そんな谷川作品「がいこつ」(詩集「みんなやわらかい」1999年)に一部インスパイアされて、との私信と共に、アーティスト本人から届けられた楽曲”Loop Life”に耳を傾けた。
2013年11月発表のアルバム「The Other Side Of Urban City Life」発表に続くリリースとなる。冒頭のリズムロールに導かれる、音像の低層をなすループ。その上空を疾走するメロディにのせて語られる Happy Sad のメッセージ。生きていくプロセスをループになぞらえ、その輪廻を俯瞰するかの視点には、彼の音楽に一貫するテーマとして流れるヒューマニティがあふれている。オールドスクールなシンセサイザーとビートによる音の構図とサウンドは、バーナード・サムナー ~ ジョニー・マーの世代感覚をバイアスをかけずに吸収したがゆえのことかもしれない。そのブルーな躍動感は、リスナーの鼓動と響き合うことを求めている。

カップリングの “Sometimes I Feel Wonder” では、一転してバンドサウンドへのこだわりをフロントに押し出した手触りが心地良い。耳にする誰もが、Happy Sad のシグネチャーともいえる60年代ブリットロックの荒削りなテイストと、卓越したメロディメイカーとしての魅力を存分に楽しむことができる。

結末ではなく、プロセスや手法そのものが生きていく目的化してしまいがちな社会や人の関係性の有り様への問いかけは、ふとヘッドアップさせられるメッセージが込められている。この2トラックの織りなすコントラストも含め、Happy Sad の紡ぎだす世界観は、私たちをとりまく「現在」を言い得ているし、そのフォーカスは確実に絞られてきている。

Jeffrey Yamada

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Jeffrey Yamada プロフィール

音楽評論家。
ルーツミュージックからR&B、ポップス、パンクまで「社会の必然(と偶然)」から生まれた音楽とその背景についての探求をテーマとして活動を続ける。過去の出稿は「アコースティックギターミュージック名盤350」(音楽出版社)、「モンドミュージック」(アスペクト)、「アートオブフォーキーズ」(音楽之友)、「Martin D-28 という伝説」(えい出版)など。

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