ソウルボトム対談第一回

〇ソウルボトム対談

「ソウルボトム(2013 single version)」リリース記念という事で、ライナーノーツを書いて下さったJeffrey yamada氏と草野が対談をする運びになりました。

ここ数年の間で、草野と共に飲む回数が最も多く、飲み友達として、または、多数の楽器を演奏するミュージシャン、音楽ライターとして、そして肩ひじを張らない仕事人として、終わる事のないトークが今日も繰り広げられました。飲んでていつも思う事なのですが、自然体で一緒に飲んで「いい酒だったな」と思える関係はやっぱり良いのです。

バンドメンバーにも言える事なのですが、特別正しいことや派手なことを言わなくても、 人に対してフェアで普通にいい人達だったりします。いつもそういう人に出会いたいです。 もしかしたら、あなたもそうかも。
飲んでいる時のような雰囲気の対談。全5回のトークをお楽しみ下さい。


第一回「音楽の表現は心象風景」

草野:「ソウルボトム」聴いていただいて、ありがとうございます。

山田:とんでもないです。
(オリジナルバージョンのソウルボトムと比べ)尺が随分短くなったことを作曲者自身が知らないというのは・・・

草野:全然気付いてなかったですね(笑)

山田:(笑)カップリングの曲も面白かったよね。

草野:カップリング曲の方が、むしろ今作りたい欲求をぶつけたような感じですね。

山田:カップリングの曲、どっちの曲だったかなあ、「Psychedelic boutique」の方だったかな、途中で変拍子になってビートルズっぽくなるやつ。

草野:それは、「Sweet Relax」ですね。

山田:あれはビートルズが炸裂してるなあ、と思って(笑)

草野:一部ですが、なんでここで出てくるのかっていう。
本当遊びながら作りましたね。

山田:いいじゃないですか(笑)

草野:もう後先考えないで、結構リラックスをして作りました。あと、この前行った幕張のイベント(エレクトラグライド2012 :http://www.electraglide.info/)もあったじゃないですか。あれに行く前からフリーフォームなインストものを結構聴いていたりしていて。

山田:エレクトラグライド、面白かったですね。ありがとうございました、誘っていただいて。

草野:いえいえ。ありがとうございました。
面白かったですね。

山田:HAPPY SAD的には何が一番良かったですか?

草野:フライング・ロータスですね、やっぱり。

山田:やっぱり。どういう所が良かったですか?

草野:サウンドや演出が面白い、というのは当たり前なんですけど、
フライング・ロータスの音楽ってハウス、エレクトロだけど、なんと言うか多少小難しい要素があるじゃないですか。フリージャズみたいな。それを万単位の人がひしめいて観ているという状況がまずすごいというか。

山田:ほう。

草野:J-popじゃないですけど、いわゆる皆がよくわかるポップな音楽じゃなくても、あれだけの人が集まるんだ、という所ですね。

山田:存在感もすごかったしね。もちろん期待値が一番高かったこともあると思うんだけど。あの時って最後は誰だったっけ。フライング・ロータスとアンディ・ウェザオールか。

草野:アンディ・ウェザオールですね。

山田:アンディ・ウェザオールとフライング・ロータスって、もう完全に世代で分けてるよね(笑)お互いに(ファン層を)分けてるよね。

草野:日なたと日陰じゃないですけど、綺麗に分かれてますよね。日本勢でも、電気グルーヴが派手なステージをやっている一方で、DJクラッシュが派手なギミック無しで硬派に斬り込んでいるというような。

山田:あの2ステージを同時進行してゆく、というのは面白いよね。
微妙にお互いカラーを補い合うというか・・・、あとは?
あ、そういえばさ、エモン・トビンのライブ演出がサンレコ(サウンド&レコーディングマガジン)に載ってましたね。

草野:サンレコに出てましたねー。ライブ時もすごい人気ありましたね。

山田:これだ、って立ち読みしてさあ(笑)

草野:まあでも、ずっと観てると30分くらいで飽きますね(笑)

山田:時の人なのかもわからんね。あの人ブラジルの人なのね。

草野:あ、そうなんですか?ブラジルっていう感じはしなかったですね。
いわゆるオーソドックスなブラジル音楽という感じはしない。

山田:周りを固めているスタッフは今回アメリカの人達みたい。

草野:なんか演出を観たという感じがしますね。音楽を聴いたという感じはしなかったですけど。

山田:ビジュアルも含めてさ、もう音楽だけっていう時代では全然ないかもわからんね。わからないけど。

草野:なんか舞台を観た感じですよね。映像に合わせて効果音が多用されていたりして。

山田:そういえばさ、最近一番よく見ているのが加藤ミリアなんだけどさ。

草野:ああ、どうですか?

山田:加藤ミリアのブログとか見るとさ、彼女の日常を見ると、音楽のプロダクションにかかっている時間があるんだけど、それ以外の所で衣装であったり、ビジュアルであったり、ビデオであったりにすごい時間をかけてやっているみたい。そういう意味で言えば、今は音楽がいいからというのは一つのエクスキューズなのかもわからんよね。

草野:お、いい話が今聞けましたね。こういう話は誰かまたパクリますよ。そうですね、HAPPY SADもなんとかしないとですね(笑)

一同:(笑)

草野:まったくそういうのに敏感に反応していないという(笑)

山田:僕はあれだな、(エレクトラグライドで)最初に観たからっていうのもあるけど、ネイザン・フェイクが良かった。

草野:良かったですね。

山田:あれなんかモロHAPPY SADの世界じゃん。結構共通する所があるというかさ。

草野:ベッドルームでああいうのを作って、それをそのまま持って来た感じというか。

山田:いわゆるテクノ、エレクトロニカというのは密室で作っているという感じがプロダクションの時はするんだけど、ネイザン・フェイクってやっぱり、密室を越えた先に広がる、ぱあっと窓を開けたら見晴らしのいい景色が見えるような感じがするじゃない。

草野:暗いトンネルの先に見えている光というか。

山田:そうそう(笑)何かねやっぱり、音楽のフォーマットや形はさておき、原体験がバアっと見える感じ。多分彼の心象風景みたいなものがおのずと出ているというかね。

草野:心象風景は大事ですね。

山田:すごくアコースティックだしね。

草野:彼が見ている心象風景、彼が暮らしている中での心象風景。いいですね。

山田:そういうのがあって、面白いかなと。

草野:心象風景ですからね。音楽の表現は。

対談・第二回へ続く